生物15 花粉管の観察


 インパチェンスなどの花粉を寒天培地に散布し、花粉管が伸びる様子を観察します。簡単にできるときもあるのですが、うまくいかないときもあります。実験を成功させる鍵は、状態のよい花粉を準備できるかどうかにあります。
動画:花粉管の観察(倍率100倍)】
【動画:花粉管の観察(倍率400倍)】


【準備物】
ア 花粉
 インパチェンス(アフリカホウセンカ) 
 4月下旬〜5月上旬に、ホームセンター等で苗(ポット)を購入します。下の写真では、1つの鉢に苗を3株ほど植えています。 急速に大きくなりますので、5月の下旬から実験できるようになります。
 インパチェンスはたくさん咲いているように見えても、実際に花粉がとれる状態の花はごくわずかです。下の写真の鉢も、元々はどれもたくさんの花が咲いていましたが、花粉の時期が過ぎた花を取り除いた結果、このような状態(まばらな状態)になりました。
 具体的には、2クラスに4鉢程度必要です。(下写真) 4クラスで実験する場合には、2日に分けて実験するようにします。

 
 インパチェンス(アフリカホウセンカ)の花粉を採取する場合、最も適しているのは、雄しべの先についている花粉が乾いてくる「よく晴れた日の午前9:30〜12:00頃」です。午後になると花粉の状態が悪くなってしまいます。私の場合3・4時間目に実験するようにしています。実験当日は、写真のように空調の効いた室内に鉢を置いておくと、天候に左右されず良い状態で採取できるのでおすすめです。
 また、インパチェンスの花粉を上手に集めるためには、時間帯だけでなく、この植物特有の花の仕組みを知っておくことがとても大切です。インパチェンスは、自家受粉を避けるために「雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)」という性質を持っています。 花の中央を見ると、5本の雄しべが合着した塊が雌しべを覆うようについています。時間が経つとこの雄しべの塊は自然と地面に落ち、中から雌しべが顔を出します。そのため、雌しべだけになった花から花粉を採取することはできません。
 具体的には、下の図1や図2の状態の花を使用します。図3や図4の状態の花から花粉を採取することはできません。

図1 おしべがめしべを包んでいる状態のものを使用する。
図2 図1を拡大するとこのように、おしべの先に熟した花粉がたくさんついているのが分かる。
図3 図2のはやがてこのような状態になる。さらに時間がたつと、雄しべがが外れて図4になる。
図4 このような状態(雌しべだけになっている)のものは花粉を取ることができない。たくさん咲いている場合でも、ほとんどの花はこの状態である。


イ 寒天溶液
 14gの砂糖に精製水を加えて200mLにします。この砂糖水に寒天を3g加え、温めながら溶かします。沸騰するまで加熱するとよいですが、沸騰させすぎると吹きこぼれてしまうため、目を離さないよう十分に注意する必要があります。ビーカーは大きめ(500mL)のものを使い、沸騰したら弱火にしてかき混ぜながら1~2分沸騰させるようにします。
 できた寒天は、100mLビーカー8個に25mLずつ小分けにして、ラップして冷蔵庫に保管します。予備実験や授業などで使用する際は、固まった寒天を電子レンジで加熱し、再び溶かして使用します。小分けしたビーカーは1回の授業で1つしか使用しませんが、予備実験等もあるので余裕を持った個数を用意しておきます。


ウ スライドガラス  
エ カバーガラス  
オ 寒天用スポイト


【実験方法】
① ビーカーの中で固まった寒天溶液を、電子レンジで温めて溶かします。500Wで10秒程度加熱しただけで、沸騰してとけます。大変吹きこぼれやすいため、加熱中は目を離さないように十分注意し、沸騰したらすぐに電子レンジを止めてください。一部にとけ残りがみられても、余熱でしばらく置いておくと全体がとけきります。
 ガスバーナーで加熱すると、とけるまでに時間がかかるだけでなく、きれいにとけません。さらに、加熱中に水分が蒸発して寒天の濃度が変わってしまう心配もあります。
② とけた寒天溶液をスポイトで吸い取り、スライドガラスに薄く伸ばします。スポイトの先をスライドガラスから離さないようにして広げていくのが、きれいに仕上げるこつです。


③ 熟した花粉がついている花を取り、下の写真のように持って、寒天培地に直接つけます。このとき、花粉が1カ所に集中しないよう、できるだけ軽く、全体にまばらにつけるのがポイントです。黒いテーブルの上でつけると花粉がどのくらいついたかがよく分かります。1つの花で、スライドガラス4個程度に花粉をつけることができます。(教科書では筆を使って花粉を散布していますが、直接つけた方が手軽です。)


④ カバーガラスをかけて顕微鏡で観察します。下写真のようにカバーガラスの端が浮いてしまいますが問題ありません。また、教科書では寒天の乾燥を防ぐため、「水を張ったペトリ皿にプレパラートを置いてフタをし、5分ごとに観察する」とされていますが、特別な対策をしなくても2時間30分ほどは十分に観察できます。
 2〜3分で花粉管が伸び始め、10分も経てばしっかりと観察できるようになります。また、授業が始まる1時間前にあらかじめ準備しておき、長く伸びた状態の花粉管のプレパラートを併せて観察させるのも効果的です。

 


【実験結果】

花粉散布から2分後
花粉散布から5分後
花粉散布から10分後


【ムラサキツユクサの場合】
 ムラサキツユクサの場合も、花粉を採取するのに適しているのは「よく晴れた日の午前9:30〜12:00頃」です。午後になると花がしぼんでしまいます。花を指で軽くはじいたときに花弁の上に花粉がパラパラと落ちる状態のものでなくてはいけません。
 顕微鏡で見ると小さな花粉と大きな花粉が見える時があります。小さな花粉からは花粉管は伸びません。(下写真参照)小さな花粉しかとれない花もあってそんなときは失敗します。 


【実験結果】

花粉散布から5分後
花粉散布から10分後
花粉散布から15分後
花粉散布から20分後
花粉散布から2時間後


【ブライダルベールの場合】
 ブライダルベールは午後に観察する場合に適しています。午前中は花が開いていない場合が多いです。花をとって直接寒天培地に花粉をつけます。花は大変小さいですが、意外に扱いやすく寒天培地に花粉をつけやすいです。
 ブライダルベールは、明るい環境を好みます。ただし、夏の強い直射日光や西日に当たると葉焼けしやすいため、屋外の明るい日陰や、レースカーテン越しの明るい窓際が最適です。 ほとんど日光が入らない暗い場所ではうまく生育できないため、置き場所には注意する必要があります。多年草で年間を通して開花するので、手軽に実験できます。