化学01-2 ボルタの電池


 現在、多くの教科書ではダニエル電池のみが扱われていますが、東京書籍の教科書にはボルタの電池も掲載されています。シンプルな構造であるため電池の導入実験としては有用ですが、すぐに反応が弱まり、意図した結果が得られにくいという課題もあります。 そこで本記事では、ボルタの電池をより長く機能させ続けるための工夫をご紹介します。
【動画:実験の様子】


【準備物】 
ア うすい塩酸 1%
 まず、精製水 370 mL に濃塩酸 50 mL を加え、5% の薄い塩酸を作ります。その後、さらに水道水で 5 倍に薄めて 1% にします。 濃度を薄くすることが、実験を成功させるポイントです。塩酸が濃すぎると最初は勢いよくモーターが回りますが、すぐに止まってしまいます。ほどほどの濃度で、長時間回し続ける方が実験に適しています。

イ 光電池専用モーター RF-510TN 
 〔スマートスクール 594円〕
 電池の実験で最も大切なのはモーターで、これが回りやすい。
 ただし、RF-510TNは赤や黒の導線が付いておらず、端子がついているだけである。導線をつなぐときは、端子のすぐ横に小さな丸いくぼみがあるほう(表側にも小さな四角のくぼみがある)に赤い導線をつなぐようにする。(一般的なモーターは、赤い導線を電池の+極をつないだとき、正面から見て軸が時計回りに回転するため。)
 ※ モーターに赤と黒のシールを貼り付けると分かりやすい。(下写真参照)

 

ウ プロペラ A 
 〔スマートスクール 10個で1012円〕

エ 金属板セット(25枚入)銅、亜鉛、鉄 
 〔スマートスクール 25枚入 銅1320円、亜鉛1221円、鉄805円〕
 市販されている金属板は長さが4.5cmのものが多いが、これは長さが5cmあるので扱いやすい。また、値段も安い。

オ マグネシウムリボン 

カ ダブルバネワイド竿ピンチ(東和産業) 
 〔ドラッグストア コスモス 6個入 198円〕
 モーターの台座として使用する。アマゾンや楽天でも同じものを売っている。

キ ビーカー(50mL または 100mL)
 うすい塩酸の量は、電極を挟むミノムシクリップが浸からない程度にします。例えば、50mLビーカーなら50mL入れると、金属板が底に当たってミノムシクリップは塩酸に浸かりません。同様に、100mLビーカーなら80mL弱にします。なお、液量が少なすぎると電極が浸かる面積が小さくなり、モーターが回りにくくなるため注意してください。

ク みのむし付リード線 
 〔ウチダス みのむし付リード線 8-615-0111 型式DL-20MS 12芯 35cm 赤黒各10本入 4493円〕
 この実験には細くてやわらかい導線が適している。


ケ +極・ー極 判定カード  
 金属板のどちらが+極なのか-極なのかを判定するカードです。モーターの回転方向で判断するようになっています。(下写真参照)【 +極と-極を判定するカード(PDF)】


【実験のポイント】
 ボルタ電池の実験を成功させる最大のコツは、銅板をガスバーナーで加熱し、表面に酸化銅の膜を作っておくことです。 特別な処理をしていない銅板を使うと、最初はモーターが回ってもすぐに止まってしまいます。しかし、あらかじめ表面に酸化銅を作っておけば、長時間モーターを回し続けることができます。 「それだと『ボルタの電池』ではなく『亜鉛と酸化銅の電池』になってしまうのでは?」と思われるかもしれません。しかし実は、何も処理をしていない普通の銅板の表面にも薄い酸化銅が形成されており、それが反応に関わっているのです。

 


【実験方法】
 2種類の金属片をうすい塩酸に浸し、導線でつなぐとモーターが回ります。金属は、銅板1枚、亜鉛板2枚、鉄板1枚、マグネシウムリボン1枚を準備します。同じ金属同士ではモーターが回らないことを確かめるため、亜鉛板を2枚用意します。なお、亜鉛板と鉄板は見た目で区別がつきにくいため、鉄板には黄色いシールを貼って区別しています。
 実験は以下の順番で行います。 まず基準として「銅と亜鉛」を行い、他の組み合わせがそれよりよく回るか、回りにくいかで判定します。また、長時間実験すると銅板表面の酸化銅が失われてモーターが回りづらくなるため、回りにくい「銅と鉄」を2番目に行います。なお、「亜鉛と鉄」はモーターが回らないこともあるため省いています。

1回目 銅と亜鉛 (回った・銅が+)
2回目 銅と鉄 (かすかに回った・銅が+)
3回目 銅とマグネシウム (よく回った・銅が+)
4回目 亜鉛とマグネシウム (回った・亜鉛が+)
5回目 鉄とマグネシウム (よく回った・鉄が+)
6回目 亜鉛と亜鉛 (回らなかった)

【動画:上記の実験の様子】

 


【その他】
・片付けについて
 2クラス続けて実験する場合は、金属板を水洗いし、ペーパータオルで拭き取らせるようにします。銅板は表面の酸化膜が失われてしまうため新しいものを用意しますが、それ以外の金属板はそのまま続けて使用して問題ありません。 また、うすい塩酸もそのまま使い回すことができます。私の場合、実験後は塩酸を回収してコーヒーフィルターで濾過し、翌年以降も再利用するようにしています。


・ボルタの電池が教科書から消え、ダニエル電池に代わった理由
 ボルタの電池が教科書から消え、ダニエル電池に代わったのは、従来教えられていたボルタ電池の仕組みには不正確な点があり、実際にはより複雑な反応が関わっていることが分かってきたためです。 例えば、銅板の表面には通常でも酸化銅が形成されており、実際には単純な水素発生以外の次のような反応も起こっています。

 
 表面の酸化銅が消費されてなくなると起電力が急激に低下するため、最初は勢いよく回っていたモーターも、しばらくすると止まってしまいます。

  ボルタ電池を教材として扱う場合の問題点については、インターネットで検索すると以下のような論文が見つかります。詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
 ・「ボルタの電池はもうやめよう」坪村 宏
 ・「高校理科教科における電池の説明について」横山 隆允・延与 三知夫
 ・「電池教材に関する考察 ボルタの電池の問題点を中心に」岡 博昭